収納代行
目次
第1 収納代行サービスとは
収納代行サービスとは,債務者が商品の購入代金等を支払う際に,第三者(収納代行業者)が債権者に代わって,債務者から代金を受領するサービスのことをいいます。収納代行サービスは,以下の流れで行われます。
①債務者が収納代行業者に代金を支払う。(→この時点で,債権者に対する債務者の債務は消滅する。) ②収納代行業者は,債務者から受領した代金から手数料を差し引いた額を債権者に支払う。 |
収納代行サービスの身近な例としては,公共料金のコンビニ払いがあてはまります。また,最近では,ベンチャー企業によって,フリマアプリや割り勘アプリなどの新しい収納代行サービスが続々と登場しています。
第2 収納代行サービスと資金決済法
1 概要
令和2年6月12日の資金決済法改正により,一部の収納代行サービスについては,資金決済法の規制を受けることになりました。以下で詳しく述べていきます。
2 資金決済法とは
資金決済法とは,資金決済の安全性,効率性及び利便性の向上を目的とする法律です。この法律によって,以前は国や銀行が独占していた為替取引を,民間企業も行うことができるようになりました。しかし,もともと国や銀行に独占させるほど重要な為替取引ですから,それを行う民間企業には,利用者の安全確保のために厳しい義務が課されます。具体的には,為替取引を行う民間企業は,利用者から預かった資金に相当する額を供託等によって保全しなければならないと規定されています。
一般に資金力に余裕のないベンチャー企業にとって,この規制はかなり厳しいです。
以前から,収納代行サービスに対しても資金決済法による規制を及ぼすべきではないかという議論がなされていました。そして,令和2年6月12日の改正により,一部の収納代行サービスについては,資金決済法の規制を受けることとなったのです。
3 資金決済法の適用を受ける収納代行とは
(1)概要
収納代行サービスが資金決済法の適用を受けるか否かを左右するポイントは,大まかに言うと以下の2つです(詳細は,資金移動業者に関する内閣府令第1条の2をご参照ください)。
㋐債権者が事業者ではなく個人であること ㋑実質的に個人間送金を行っているもの |
この㋐と㋑を両方満たす場合,資金決済法の適用を受けることになります。
(2)具体例1 割り勘アプリ
割り勘アプリは,㋐と㋑を充たすものとして,資金決済法の規制を受けることとなりました。
割り勘アプリとは,複数人で飲み会等をする場合,幹事以外の参加者(債務者)が幹事(債権者)に対してオンラインで送金することにより,スマートな割り勘を実現するものです。この場合,幹事以外の参加者が幹事に対して飲み会の参加費用を支払う義務を負っているわけですから,幹事が債権者,幹事以外の参加者が債務者ということになります。
債権者は,事業者ではなく一個人である幹事ですから,㋐を充たします。また,幹事(債権者)と幹事以外の参加者(債務者)との間では,お金の動きがあるだけです。お金以外に,何らかの商品やサービスが取引されているわけではありません。つまり,実質的には個人間で送金しているだけなので,㋑も充たします。
割り勘アプリ事業者(収納代行業者)が破産した場合,法的には,幹事(債権者)が全員分の飲み会代を負担することになってしまいます。これでは幹事(債権者)は大きな損害を被ることになります。また。幹事を気遣った幹事以外の参加者(債務者)が,幹事に飲み会代を再度支払うかもしれません。しかし,この場合,幹事以外の参加者は飲み会代を二重に支払っているわけで,こちらも大きな損害を被ることになります。したがって,双方の利用者を保護する必要が大きいことから,資金決済法の規制を受けることになりました。
(3)具定例2 エクスロー決済サービス
エクスロー決済サービスは,㋑を充たさず,資金決済法の規制を受けないこととなりました。
エクスロー決済サービスとは,第三者が決済を仲介することにより,取引の安全性を確保するサービスをいいます。たとえば,フリマアプリを利用する際,買主と売主は初対面なので,両者間に信頼関係はありません。買主が売主に代金を支払ったのに,売り主から商品が送られてこないというトラブルが頻発します。そうなると,安心してフリマアプリを利用することができなくなり,誰もフリマアプリを利用しなくなってしまいます。そこで,第三者である収納代行業者が決済を仲介するわけです。買主は,収納代行業者に代金を支払います。収納代行業者は,買主が商品を受け取ったことを確認したうえで,買主から受け取った代金を売主に支払います。こうすることで,誰もが安心してフリマアプリを利用することができます。
フリマアプリの売主(債権者)は個人である場合が多いですから,㋐は充たします。しかし,フリマアプリの売主(債権者)と買主(債務者)との間では,商品が動いており,収納代行業者はその仲介をしているわけです。つまり,単なる個人間送金にとどまらないわけです。そもそもエクスロー決済サービスは,フリマアプリの利用者を保護するために行われており,これに対する規制を厳しくすることでエクスロー決済サービスが衰退してしまっては,かえって利用者保護が後退してしまいます。よって,㋑を充たさないとして,資金決済法の規制を受けないこととなりました。
第3 収納代行サービスに対する今後の法規制
ここまで見てきた通り,令和2年6月12日の改正では,資金決済法の規制を受ける収納代行サービスは一部にとどまりました。しかし,収納代行サービス全般に資金決済法の規制を及ぼすべきという意見も根強いです。今後,収納代行サービスで大きなトラブルが起こる等すれば,資金決済法の規制対象が拡大する可能性も十分考えられます。今後も,収納代行サービスに関する法規制の動向を注視する必要があります。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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