資金決済法
目次
1 資金決済法の改正
令和2年6月5日,資金決済法が改正され,令和3年5月1日から改正法が施行されています。改正された資金決済法(以下「改正法」といいます。)は,情報通信技術の発達等による,キャッシュレス時代に対応した,利便性が高く安心・安全な決済サービスに対するニーズに対応するため,決済法制との関連で,資金移動業の規制を見直し,利用者保護のための措置について改正しています。
2 改正の内容
(1) 改正の背景
これまで100万円以下の送金に限り取り扱いが可能であった資金移動業は,制度創設から約10年間で着実にサービスを拡大してきました。海外送金などでは,100万円超の送金ニーズがある一方,実態を見ると,5万円未満の送金が9割近くであり,アカウント残高も5万円未満が9割以上となっていました。改正法は,こうした背景事情を踏まえ,資金移動業者が利用者ニーズに応えることを可能にし,規制内容をリスクに応じた過不足のないものとしました。改正の概要は以下のとおりです。
(2) 類型の新設
次のように,資金移動業に類型を設け,送金額・リスクに応じた過不足のない規制を適用しました(改正法36条の2関係)。
ア 第一種資金移動業(高額類型)
100万円を超える高額送金の取扱いが可能な新しい類型が創設されました。
(ア) 認可制の導入
資金移動業を営もうとする者は,内閣総理大臣の登録を受けなければなりませんが,これに加え,第一種資金移動業を営もうとする場合は,業務実施計画を定めたうえで,内閣総理大臣の認可を受けなければならないこととされました(改正法40条の2関係)。
(イ) 資金滞留リスクの軽減
資金移動業者が利用者から受け入れた金銭は,供託などの方法により保全されますが,資金移動業者が破綻した場合には,利用者が資金の返還を受けるまでに一定の時間を要するなどの課題があります。第一種資金移動業者は,高額送金を取り扱うため,利用者から高額の資金を受け入れることとなることから,その高まるリスクに対応するため,具体的な送金指図がある場合にのみ利用者から資金を受け入れることとし,ただちに送金するといった制限を設けています(改正法51条の2関係)。
イ 第二種資金移動業(これまでの類型)
従前の枠組みを維持していますが,利用者から預かった資金が100万円を超える場合は,送金と無関係な資金の払い出しを求めています(改正法51条関係)。
ウ 第三種資金移動業(少額類型)
5万円以下の少額送金を取り扱う類型について,利用者資金の保全に係る規制を合理化し,利用者から預かった資金について,供託などの保全方法に代えて,分別した預金で管理することを認め,外部監査を義務付けました(改正法51条の3,45条の2第1項,第2項,53条3項関係,資金決済法施行令12条の2第2項)。
(3) 資金保全の合理化
資金移動業者は,従前,利用者資金を週ごとに管理し,保全することとされていましたが,類型ごとのリスクの違いにも留意しつつ,可能な限りタイムラグを縮小することとしました(改正法43条関係)。
また,資金移動業者による利用者資金の保全方法として,供託,保証,信託が認められていましたが,信託とそれ以外との組み合わせは認められていなかったところ,ビジネスモデルに応じた保全方法の柔軟な組合せが可能となり,送金コストのさらなる削減が可能となりました(改正法44条,45条関係)。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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