事業譲渡
目次
1 事業譲渡とは
事業譲渡とは,会社がその事業の全部又は一部を譲渡することをいいます。工場設備や在庫等の有形資産はもちろんのこと,ノウハウ等の無形資産も含めて譲渡することができます。会社の組織再編方法の1つで,経営の効率化や事業再生を目的として行われます。会社法は,467条以下で,事業譲渡に関する規定を定めています。
2 事業譲渡を選択するメリット
組織再編の方法としては,事業譲渡のほかにも,合併や会社分割,株式交換などが考えられます。事業譲渡には,これらの手法と比較して以下のような特徴があります。
(1)一部の事業だけを移転させることができる
会社が複数の事業を営んでいる場合,一部の事業だけを選んで譲渡することができます。したがって,不採算事業だけを切り離して譲渡することや,得意分野の事業だけを会社に残し,これに専念して経営を立て直すことも可能です。残したい従業員や資産を会社に残すことも可能です。
これは,譲受会社にとってもメリットといえます。ある会社を包括的に譲り受ける場合,簿外債務等があり不測の損害を被る危険性があります。しかし,事業譲渡であれば,何を譲り受けるのかを契約締結時点で明確にすることができますので,そのような危険性が低いといえます。
(2)譲受会社にとって節税になる
事業譲渡を行った際、譲受会社は,のれん相当額を5年間償却の損金扱いにすることが可能です。そのため、法人税の節約につながります。
3 事業譲渡の注意点
(1)株主総会決議が必要(会社法468条1項,309条2項11号)
事業の全部を譲渡する事業譲渡の場合,譲渡会社も譲受会社も,株主総会の特別決議で承認を得る必要があります。また,事業の一部を譲渡する事業譲渡の場合にも,その一部が重要といえる場合は,譲渡会社だけは株主総会の特別決議で承認を得る必要があります。
(2)個別の権利移転手続きが必要
事業譲渡は,合併等のように譲渡会社の権利義務が包括的に承継されるわけではありません。そのため,取引先や従業員との契約関係を譲受会社へ譲渡することについて,個別の同意を得る必要があります。譲渡する事業に関する契約がたくさんある場合は,個別の同意を得るのに時間と手間がかかることになります。
4 まとめ
上記の通り,事業譲渡にはメリットも注意点もあり,事業譲渡という手法で組織再編を行うのが適切かどうか,専門的な検討が必要です。
また,譲渡対象を選べるという点は,事業譲渡最大のメリットともいえますが,それと同時に,譲渡対象がどこまでなのかをめぐって,後々トラブルになる可能性が高く,事業譲渡契約書の作成は必須といえるでしょう。
事業譲渡をご検討の際は,ぜひ一度,事業譲渡に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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