下請法が適用される取引とは
はじめに
企業が取引をする場合には、下請法が適用されるかどうか注意する必要があります。下請事業者は、下請法の保護を受けることができますし、親事業者が下請法を適用されることに気づかずに同法に違反してしまった場合、公正取引委員会から違反行為を取りやめるよう勧告されるほか、企業名、違反事実の概要が公表されるおそれがあります。
この記事では、下請法の概略や下請法の適用対象について解説します。
下請法とは
下請法(正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」といいます)は、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律です。
下請法が適用される場合、受領拒否、下請代金の支払い遅延、下請代金の減額、返品、買いたたきが禁止されることになります。
下請法の適用対象
下請法は、適用の対象となる取引を、取引の対象と当事者の資本金(又は出資金の総額)の二つの区分から定めています(下請法2条7項、8項)。
下請法の対象となる取引
下請法の対象となる取引は、物品の製造委託・修理委託、情報成果物委託、役務提供委託の4種類の取引です。
このうち、情報成果物委託については、プログラムの作成かそれ以外か、役務提供契約においては、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理かそれ以外かによって資本金での区分が異なります。
① 製造委託とは
物品を販売し、または製造を請け負っている事業者が、規格、品質、形状、デザイン、ブランドなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託することをいいます。ただし、ここでいう「物品」とは動産のことを意味しており、家屋などの建築物は対象に含まれません。
② 修理委託とは
物品の修理を請け負っている事業者がその修理を他の事業者に委託したり、自社で使用する物品を自社で修理している場合に、その修理の一部を他の事業者に委託することなどをいいます。
③ 情報成果物委託とは
ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど、情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することをいいます。
④ 役務提供委託とは
運送やビルメンテナンスをはじめ、各種サービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託することをいいます。ただし、建設業を営む事業者が請け負う建設工事は、役務には含まれません。
資本金の区分
資本金での区分は、取引の種類によって異なります。
①物品の製造委託、②修理委託、③プログラムの作成、④運送・物品の倉庫の倉庫保管・情報処理
資本金3億1円以上の会社が、資本金3億円以下の会社または個人事業者に、①~④の取引を外注した場合には、下請法が適用されます。
資本金1千万1円以上3億円以下の会社が、資本金1千万円以下の会社または個人事業者に、①~④の取引を外注した場合には、下請法が適用されます。
⑤放送番組や広告の制作、商品デザイン、製品の取扱説明書、設計図面などの作成などプログラム以外の情報成果物の作成、⑥ビルや機械のメンテナンス、コールセンター業務などの顧客サービス代行など、運送・物品の倉庫保管・情報処理以外の役務の提供
資本金5千万1円以上の会社が、資本金5千万円以下の会社や個人事業者に⑤、⑥の取引を外注した場合には、下請法が適用されます。
資本金1千万1円以上5千万円以下の会社が、資本金1千万円以下の会社や個人事業者に⑤、⑥の取引を外注した場合には、下請法が適用されます。
子会社を通して取引する場合の注意点
直接下請事業者に委託をすれば下請法の対象となる事業者が、子会社を設立し、その子会社を通じて委託取引を行っている場合に、①親会社が子会社の議決権の過半数を有しているなど、親会社が役員の任免、業務の執行等について、子会社を実質的に支配していること、②親会社から受けた委託の額又は量の50%以上を再委託しているなど相当部分を他の事業者に再委託していることという要件を満たせば、下請法の適用を受けます。
最後に
事業者が取引を行う場合、下請法の適用には常に気を配る必要があります。そのためには、弁護士に相談できる環境をつくることが必要です。
下請法の適用についてお悩みの企業様は、この分野に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。
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