株主総会資料の電子提供制度
株主総会資料の電子提供制度がスタート
「会社法の一部を改正する法律」により、令和4年9月1日から株主総会資料の電子提供制度が施行されました。
以前は、株主参考書類等の提供は書面によることとされていたため、コストも時間もかかっていました。この改善を目的として導入されたのが、株主総会資料の電子提供制度です。
会社は、株主参考書類等をウェブサイトに掲載するとともに、そのウェブサイトのアドレス等を株主に通知することで、株主総会を株主に提供したものとすることができます。東京証券取引所作成の2024年4月25日付「2024年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」によれば、プライム市場上場会社においては、6.9%がアクセス通知のみ、48.3%がアクセス通知とサマリー資料、44.8%がフルセット・デリバリーで通知するようです。
株主総会資料の電子提供制度
定款の定め
電子提供制度を利用するには、その旨の定款の定めが必要になります。振替株式発行会社(上場会社)には、電子提供制度をとる定款を定めることが義務化されています(社債、株式等の振替に関する法律159条の2第1項)。
電子提供措置
電子提供制度を利用するためには電子提供措置をとる必要があります。具体的には、会社が、インターネット上のウェブサイトに株主総会参考書類等の内容を掲載して情報の提供を行うこと、株主がウェブサイトの情報の内容を閲覧することができる状態にすること、その情報を株主がパソコン等に保存することができる必要があります。電子提供措置をとるべき事項は、以下のとおりです。
①招集通知の記載事項
②書面による議決権行使を定めた場合、株主総会参考書類及び議決権行使書面記載事項
③電磁的方法による議決権行使を定めた場合、株主総会参考書類記載事項
④株主から議案要領通知請求がなされた場合、議案の要領
⑤取締役会設置会社において定時株主総会を招集する場合、計算書類及び事業報告記録事項
⑥取締役会設置会社かつ会計監査人設置会社が定時株主総会を招集する場合、連結計算書類記載事項
⑦前各号の事項を修正したときは、その旨及び修正前の事項
電子提供措置は、株主総会の日の3週間前または招集通知の発送日のいずれか早い日から、株主総会の日後3か月を経過する日までの間、行わなければなりません。
なお、電子提供措置が中断された場合でも、以下の全ての要件を満たす場合には、電子提供措置の効力に影響は及ぼさないとされています。
①中断につき会社が善意無重過失又は正当な事由があること
②中断が生じた時間が電子提供措置期間の10分の1以下であること
③電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に中断が生じた場合には、中断が生じた時間の合計が当該期間の10分の1を超えないこと
④中断が生じたことを知った後速やかに、中断が生じた旨、中断時間及び中断内容について電子提供措置をとること
株主総会招集通知の送付
電子提供措置をとれるのは株主参考書類等についてであり、株主への招集通知は送付する必要があります。招集通知は、株主総会の2週間前までに株主に対して発する必要があります。
招集通知には、以下の内容を記載します。
①株主総会の日時及び場所
②株主総会の目的事項
③書面による議決権行使を認めるときはその旨
④電磁的方法による議決権行使を認めるときはその旨
⑤電子提供措置をとっている旨
⑥電子提供措置をEDINETを使用して行ったときはその旨
⑦電子提供措置を利用しているウェブサイトのURL等
書面交付請求
株主は会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができます。会社は、招集通知に際して、交付請求をした株主に対し、電子提供措置事項を記載した書面を交付しなくてはなりません。
株主は、一度書面交付請求をすると、以下の場合を除き、請求後のすべての株主総会について書面交付請求をしているものとして取り扱われます。
①書面交付請求を撤回したとき
②書面交付請求をしてから1年が経過したとき、会社から当該株主に対し、書面の交付請求を終了する通知をし、かつ、異議があれば1か月以上の催告期間を定めて異議を述べるよう催告したものの、異議が述べられなかったとき
最後に
株主総会資料の電子提供制度は、これまで書面を前提としていた会社の負担を軽減する制度です。近年は、法律もインターネット等の時代の変化に対応しようとする法改正が頻繁に行われていますので、電子化の一環として電子提供措置の導入を検討されてはいかがでしょうか。
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