役員の解任と損害賠償のリスクとはなんですか?
取締役(役員)の解任とは
取締役の解任とは,株主総会の決議によって,任期の途中にある取締役を,取締役の意思に反して辞めさせることです(会社法339条1項)。取締役が不祥事を起こしてしまった,取締役に期待していた能力がなかった等,任期満了まで取締役の地位に置いておくのが不適当な場合には,取締役の解任を検討することになります。
損害賠償のリスクとは
株主総会の決議があれば,いつでも取締役を解任することができるのですが,解任について,正当な理由がない場合は,解任された取締役は,会社に対して損害賠償を請求することができます(会社法339条2項)。これが,損害賠償のリスクです。
損害賠償の金額は
正当な理由が認められず,取締役の損害賠償請求が認められた場合,会社が支払わなければならない金額は,①解任した日から,もともとの任期満了日までの報酬と②任期満了まで務めたと仮定した退職慰労金の合計額となります。残りの任期期間によっては,かなり高額の損害賠償となります。
正当な理由とは
このように正当な理由が認められなかった場合のリスクは大きいため,取締役を解任する前に,正当な理由があるのかどうかをしっかりと見極めておくことが重要です。東京地裁平成25年5月30日判決は,一般論として,正当な理由が存在する場合とは,①不正の行為や定款又は法令に違反する行為があった場合,②取締役が経営に失敗して会社に損害を与えた場合,③当該取締役の経営能力の不足により客観的な状況から判断して将来的に会社に損害を与える可能性が高い場合には認められるが,単に株主と取締役との間で経営方針が異なるというだけでは認められないとしています。 これらの場合でも,①の不正行為や法令違反の場合は比較的認められやすいと言えます。例えば,東京地裁令和3年9月22日判決は,解任された取締役が,自らないしは第三者が負担すべき物品の購入費用,旅行代金等を会社に負担させていたのは,法令に違反する疑いのあるものであるとして,正当な理由を認めています。他方で,②の経営の失敗や③の経営能力の不足は,そもそも認定自体が難しいことから,結論として正当な理由が認められない裁判例が多いと言えます。
取締役を解任する場合は,弁護士に相談するのがベスト
このように,解任に正当な理由があるのかどうかの判断は,法的な評価を踏まえた判断となるため,事前に弁護士に相談をして,損害賠償のリスクに備えておくことがベストです。
会社法・金融商品取引法記事
-
会社法・金融商品取引法
ハイブリッド型バーチャル株主総会の概要
-
会社法・金融商品取引法
Q.友好的資本提携とはどのような提携を意味しているのでしょうか?
-
会社法・金融商品取引法
Q.招集通知発送後に株主総会の開催日時・場所を変更することはできるか?
-
会社法・金融商品取引法
会社の代表取締役が認知症になってしまった場合
-
会社法・金融商品取引法
代表取締役・取締役の退任について
-
会社法・金融商品取引法
取締役(役員)を解任する際の注意点と損害賠償リスクを回避する方法
-
会社法・金融商品取引法
創業株主間契約の重要性
-
会社法・金融商品取引法
資本政策の重要性
-
会社法・金融商品取引法
代表取締役の変更と特別利害関係人
-
会社法・金融商品取引法
役員(取締役・監査役・執行役員等)に対する処分と対応方法
-
会社法・金融商品取引法
取締役会と会社法規定について
-
会社法・金融商品取引法
代表取締役の解任について
-
会社法・金融商品取引法
取締役の紛争
-
会社法・金融商品取引法
取締役の責任(競業避止義務)
-
会社法・金融商品取引法
取締役の責任(利益相反について)