ECサイト運営の注意点

ECサイトとは,商品やサービスを独自運営のwebサイトで販売しているサイトのことです。このようなサイトの運営には,様々な法律上の制限があります。以下,特に注意すべき法律について具体的に解説します。

1 電子契約法

(1)ECサイトでの契約の成立

契約は,買主の「買いたい」という申込と売主の「売ります」という承諾によって成立します。

ECサイト上では,買主が「購入」の申込ボタンを押して,サイトから「注文を承りました」というメールやサイト上の表示が買主に届くことで契約成立となります。サイトでは,買主からの購入申込について,自動返信するものもありますが,その場合でも契約は成立します。

事業者が,購入申込に対し,事前に在庫等の確認を行いたい場合には,自動返信メールに「在庫を確認のうえで,受注可能な場合は改めてメールをお送りします」等の文章を入れておく必要があります。この場合は,購入申込に対して承諾したメールとはいえず,契約成立には至っていません。改めてサイトから購入者への承諾のメールが届くことで契約成立となります。

(2)購入者からの注文の取消

ECサイトでの取引は,購入者の入力ミスや商品の勘違いにより,誤って「購入」のボタンを押してしまうことであります。購入者側に重大な過失があるということができますが,このような場合であっても事業者は,購入者からの注文の取消を拒むことができません。

しかし,これでは,事業者は売れたと思った商品を売れなくなるリスクを抱えながら事業を営まなくてはならず,あまりに不公平です。

そこで,電子契約法は,例外的に,事業者が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、購入の意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、重大な過失があった購入者からの取消はできないものとしています。

事業者は,確認措置として①あるボタンをクリックすることで申込の意思表示となることを消費者が確認することができるボタンを設定する(「購入」ボタンの後に,確認画面を表示して「確認」ボタンを設置する),②最終的な意思表示となる送信ボタンを押す前に,申込の内容を表示し,そこで訂正できる機会を与える画面を設定する等の対応をすることで購入者からの取消を防ぐことができます。

 

2 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)

(1)メール送信のための事前の同意

ECサイトの利用者に対して,メルマガ等の広告宣伝の電子メールを出すことが一般的に行われています。しかし,このような広告宣伝メールの送信は無制限に行えるものではないのです。

特定電子メール法では,原則的に,あらかじめメールの送信に同意した者に対してのみ広告宣伝メールを送ることができるよう定められています。もっとも,例外として,①名刺などの書面により自分のメールアドレスを通知した者,②自分の電子メールをインターネットで公表している者に対しては,同意は不要です。

同意を得る一般的な方法としては,購入ページ等で「メルマガの配信を希望する」といったチェックボックスにチェックしてもらう方法がとられています。なお,同意を証する記録には,一定期間の保存義務があります。

(2)メールへの表示義務

広告宣伝メールには,送信者に以下の事項の表示が求められます。忘れずにメールに記載しましょう。

①送信者などの氏名または名称

②受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレス又はURL

③受信拒否の通知ができる旨の記載

④送信者等の住所

⑤苦情・問合せ先の連絡先

(3)特定商取引法上の電子メール広告規制

特定商取引法にも,特定電子メール法と同じような規制がなされています。特定商取引法でも,電子メール広告を送信することは,原則禁止とされていますが,以下の場合は規制の対象外となります。

①「契約の成立」「注文確認」「発送通知」などに付随した広告 契約内容や契約履行に関する通知など「重要な事項」を通知するメールの一部に広告が含まれる場合

②メルマガに付随した広告 消費者からの請求や承諾を得て送信する電子メール広告の一部に広告を記載する場合

③フリーメール等に付随した広告 インターネット上で、無料でメールアドレスを取得できるサービスで、無料の条件として、利用者がそのアドレスからメールを送ると、当該メールに広告が記載されるものなどの一部に広告を記載する場合

電子メールを送るときは,特定電子メール法,特定商取引法の両方に注意しましょう。

 

3 特定商取引法

ECサイトによる商品・サービスの販売は,「通信販売」にあたります。よって,特定商取引法による以下のような様々な制限を受けます。

(1)広告の表示

「通信販売」を行うため,以下の事項を購入者に表示しなくてはなりません。

①販売価格,送料

②代金の支払い時期、方法

③商品の引渡時期,役務の提供時期)

④商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項

⑤事業者の氏名(名称)、住所、電話番号

⑥事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名

⑦申込みの有効期限があるときには、その期限

⑧販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額

⑨商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容

⑩いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境

⑪商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件

⑫商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容

⑬請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額

⑭電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス

(2)誇大広告の禁止

誇大広告や著しく事実と相違する内容の広告による消費者トラブルを未然に防止するため、 表示事項等について、著しく事実に相違する表示や実際のものより著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示は禁止されています。

(3)顧客の意思に反して契約の申込をさせようとする行為の禁止

インターネット販売で,ボタンをクリックしたときに,それが有料の申込となることが購入者に容易に認識できるように表示する必要があります。例えば,最終的な申込ボタンが「購入」等ではなく「送信」と表示されている場合,購入の申込と認識できない表示とになされるおそれがあります。

また,購入者が申込みをする際、申込み内容を容易に確認し、かつ、 訂正できるようにしておく必要があります。

(4)行政処分・罰則

上記の規制に違反した場合,事業者は,業務改善の指示,業務停止命令,業務禁止命令の対象になるほか,懲役・罰金となる場合もあります。

 

 ECサイトの運営に関する法的問題にお困りの経営者の方は、この問題に詳しい弁護士に一度ご相談ください。

 

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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