取締役(役員)を解任する際の注意点と損害賠償リスクを回避する方法

1.はじめに

 経営方針があわなかったり、不正行為が疑われる等の理由で、取締役の解任を検討しておられる企業様もいらっしゃると思います。そこで、取締役を解任する際の注意点について、説明させていただきます。

 

2.取締役を解任する要件

 解任とは、任期の満了をまたずに任期の途中でやめさせることをいいます。

 解任が可能となるには、①「定款に特別な定めがない」限り、②「議決権の過半数を有する株主が出席」する株主総会において、③「出席株主の議決権の過半数が解任に賛成」することが必要となります(会社法339条1項)。

 但し、解任について「正当な理由がない」場合、会社は解任された取締役から損害賠償を請求されるおそれがあることに注意する必要があります(会社法339条2項)。

 

3.損害賠償リスクと回避方法

(1)損害賠償の額

 解任について「正当な理由がない」場合、会社が解任された取締役に賠償しなければならない額は、過去の判例に鑑みると、概ね、「解任された取締役が任期満了まで務めた場合に受領できたはずの報酬の総額」と判断されることが多いようです。

 具体的には、月額200万円の取締役が、任期満了まで1年を残して、正当な理由なく解任された場合、「200万円×12か月=2400万円」が損害賠償の額となる見込みが高いということになります。

 この点、株式会社の取締役の任期は原則2年ですが、株式譲渡制限会社の場合、定款で最長10年まで任期を延長することが可能です。そのため、任期を延長していた場合に安易に正当な理由なく解任してしまうと、思ってもみないような高額な損害賠償額になるおそれがありますので、取締役の任期を延長されている企業様は、特にご注意ください。

(2)正当な理由とは

 会社法339条2項の「正当な理由」の考慮要素としては、担当事業部門の廃業、職務遂行上の法令定款違反、心身の故障、職務への著しい不適任が挙げられるといわれています(江頭憲治郎著「株式会社法 第7版」400頁参照)。

 なお、職務への著しい不適任については、「取締役としての職務遂行への著しい不適任の有無」で判断されます。たとえば、社用車を私的に利用していたり、会社から業務上借りた金銭を返していない等の事情は、いずれも取締役としての職務執行とは直接の関係がない事項として、正当な理由がないと判断されるおそれがありますので、ご注意ください(東京地裁平成27年6月29日判決参照)。

 また、たんに経営能力が不足しているとか、株主との経営方針との相違があるといった事情だけで、会社に損害が発生しておらず、将来的にも損害を被るおそれが高いとはいえない場合に解任する場合にも、正当な理由がないと判断されるおそれがあり、会社は損害賠償責任を負うリスクがありますので、ご注意ください。

 

4.損害賠償リスクの回避方法

  取締役の解任に関しては、上記のとおり会社が損害賠償責任を負うリスクがあります。

  そこで、このリスクを回避する方法としては、次の方法が考えられます。

 ①対象となる取締役の任期満了を待つ

 取締役の任期が満了するのを待って再任しないという方法をとれば、会社が損害賠償責任を負うことはありません。

 なお、定款を変更し任期を短縮した場合、在任中の取締役の任期も短縮されますが、再任しない場合については、取締役の解任規定(会社法339条2項)が類推適用され、「正当な理由」がなければ損害賠償責任を負うリスクがありますので、ご注意ください。

 ②対象となる取締役の辞任を促す

 取締役自身の意思により辞任するのであれば、解任の可否の問題は生じず、損害賠償責任を負うリスクは生じません。そこで、いきなり解任するのではなく、まずは辞任を促すことも試みるとよいでしょう。この点は、役員の退職金支給の要件との関係も考慮する必要があります。

 ③解任する場合は、解任の理由について精査し、証拠を収集する

 任期満了までかなりの期間が残っていたり、辞任にも応じない場合、解任を検討することになります。

 この点についても、役員の能力不足を理由に解任する場合は、会社に実害が生じたこと等について、証拠を収集しておきましょう。ただし、これらの点については、立証が困難であることが予想されます。そこで、役員の職務に不正行為や法令違反がないかについてもあわせて調査してみてください。

 なお、対象となる取締役が従業員を兼務している場合には、別途従業員として解雇するか否かも検討する必要があります。解雇する場合は、解雇要件と手続きについても準備する必要がありますので、ご注意ください。

 

5.まとめ

 上記のとおり、取締役を解任する場合、会社は損害賠償責任を負うリスクがあるうえに、残された任期によっては、高額な賠償責任を負わされることもありますので、出来る限りこのリスクを回避できるように、事前に方法や理由、証拠について十分に検討するようにしてください。 

 

 取締役の解任に関してお悩みの企業様は、この問題に詳しい弁護士にご相談ください。

 


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