Q.元請会社が下請会社に対しペナルティを科す条項の適法性

質問

弊社は,運送業の下請けをしております。

ある元請会社との業務委託契約締結の際,元請会社から,以下のような条項を含む契約を提案されました。このような条項は,適法なのでしょうか。

「下請会社は,元請会社に対し,委託を受けた荷物の配送業務に関し,元請会社の定める時間に,配送状況の定時報告を行う義務を負う。定時報告を10分以上遅滞した場合には,ペナルティとして委託料の数%を元請会社に支払う。」

回答

ご指摘の条項は,元請会社が,下請会社(貴社)に対し,元請会社に発生した具体的な損害の内容にかかわらず,定時報告が遅滞した場合に一定の金銭を損害賠償として支払わせるものですので,下請法,又は,独占禁止法上の優越的地位の濫用として禁止されている「不当な経済上の利益の提供要請」にあたると考えられます。

そのため,元請会社と下請会社(貴社)との取引が下請法の適用対象である場合,又は,元請会社と下請会社(貴社)の間で上記条項を定めることが独占禁止法上の優越的地位の濫用にあたる場合には,ご指摘の条項を定めることはできないことになります。

 

まず,運送業における取引が下請法の適用対象となるのは,以下のいずれかの場合です。

・元請会社の資本金が3億1円以上であり,かつ,下請会社の資本金が3億円以下

・元請会社の資本金が3億円以下であり,かつ,下請会社の資本金が1千万円以下

 

元請会社と下請会社(貴社)の取引が下請法の適用対象外である場合には,ご指摘の条項が,優越的地位の濫用にあたるか否かを検討することになります。

これは,元請会社が下請会社に対し,①優越的地位を利用して,②正常な商慣習に照らして不当に,③優越的地位の濫用行為を行っているといえるか否かにより判断されます。

ここで,③ご指摘の条項が「不当な経済上の利益の提供要請」にあたることは上述のとおりですので,①元請会社が下請会社(貴社)に対し,優越的地位を有しているといえるかが問題となります。

これは,下請会社にとって元請会社との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,元請会社が下請会社にとって著しく不利益な要請等を行っても,下請会社が受け入れざるを得ないような関係であるか否かによって判断されます。

 

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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発行日:2021.03.04

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