運送会社に対する行政処分

第1 はじめに

 運輸局による監査の結果、法令違反が発覚した場合、運送会社に対して行政処分が科されます。コンプライアンス遵守が叫ばれる昨今、運送会社としても、そのような処分が科されない体制を整えることが必須といえます。
 そこで、今回は、運送会社に対して科される行政処分の種類やその内容について解説していきます。

 

第2 行政処分の種類

1 行政処分を受けるまで

 運送会社は、当然、道路運送法や貨物自動車運送事業法等の法令を遵守する必要があります。そして、国土交通省の地方運輸局は、上記法令に違反した疑いのある事業者や、事故を起こした事業者に対して、「監査」を実施し、実際に法令違反があった場合に、行政処分を科す仕組みを取っています。
 ここでいう「監査」には、特別監査、一般監査、街頭監査の3つがあります。特別監査は、いわゆる「トッカン」と呼ばれるもので、重大な法令違反の疑いがある場合に全般的な法令遵守状況を確認するために実施されるものです。一方で、一般監査は、予め定めた重点事項に限って法令が遵守できているかを確認するものです。街頭監査とは、主にバス事業者に実施され、対象者を特定せずに実際の運行状態を確認するものです。

2 行政処分の種類

 監査の結果、法令違反が明らかになった場合、その内容及び程度に応じて、行政処分が科されます。運送会社に科される可能性のある行政処分は、「車両使用停止」、「事業停止」、「許可取消し」の3種類です。以下、順に見ていくことにいたします。

⑴ 車両使用停止(=処分日車数制度)

 車両使用停止とは、一定期間、対象車両のナンバープレートを運輸局に持っていかれてしまう処分です。点呼の一部の未実施や、帳簿類の改ざんなどが判明した際に、科されます。当然ながら、ナンバープレートがついていない車両を事業に供することはできません。
 車両使用停止処分には、処分日車数制度が適用されます。「処分日車」とは、1台の車両をどれくらいの期間使用停止にするかを示す単位です。具体的には、1台の車両を1日使用停止にする場合、「1日車」30日使用停止にする場合、「30日車」の処分ということになります。
 そして、使用停止となる車両数は、合計処分日車数と事業所に配置されている車両の数によって決まります。以下の表をご覧ください。

処分日車数 所属する事業用自動車の数
「X」 ~10両 11~20両 21~30両 31両~
~10日車 1両 1両 1両 1両
11~30日車 1両 2両 2両 2両
 31~60日車 1両 2両 3両 3両
61~80日車 2両 3両 4両 5両
 81日車~ Y+(X―80)/10
(「Y」は、所属する事業用自動車の数が31両以上の場合を除き、
処分日車数61~80日車の各欄に定める処分車両数とし、
所属する事業用自動車の数が31両以上の場合にあっては、「8」とする。)

 3年以内に同じ違反をした場合には、使用停止期間が2倍になったり、200日車を超える車両停止処分を受けた場合には、運輸局のホームページに会社名が公表されたりするため、運送会社にとっては注意しなければなりません。

⑵ 事業停止

 事業停止とは、悪質な法令違反が判明した場合に、一定期間事業そのものを行うことを禁止にする処分です。事業用車両の運転者の勤務時間に係る基準を著しく遵守していない場合や、点呼を全く実施していない場合等に科されます。
 事業停止処分を科されると、原則として30日間、運送事業を行うことができません
 また、違反点数が51点以上80点以下となった場合には、当該違反事業所等が所在する管轄区域内の全ての事業所で、事業を行うことができなくなります

⑶ 許可取消し

 許可取消しとは、その名の通り運送業の許可が取り消され、再度許可を受けない限り、二度と運送業を行うことができなくなる処分です。過去2年間に3回事業停止処分を受けていた事業者が再び一定の事業停止処分を受けた場合や、違反点数が81点以上となった場合に科される処分です。
 これまで述べてきた中で最も重い処分となります。

⑷ 違反点数制度

 法令違反があった場合、車両使用停止や事業停止の処分とは別に、違反点数というものが運送事業者に付与されます。そして、違反点数は、基本的には3年間累積していき、⑵⑶の記載を見ても分かる通り、点数がかさんでいけば重大な処分を科される危険があります。
 そのため、事業者としては、違反点数を累積させないよう、常日頃から法令遵守を徹底する必要があります。

 

第3 終わりに

 今回は、運送会社に対して科される行政処分をご紹介しました。運送業を行う方にとっては、今後の経営にも影響する非常に重要な内容ですので、今一度ご確認いただければと思います。
 自分の会社が法令を遵守できているかご不安な方や、行政庁・行政処分への対応についてお困りの方は、この分野に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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発行日:2021.03.04

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