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倉庫を活用した事業を行う場合の注意点
目次
1 はじめに
自社倉庫の空きスペースを活用し、第三者の商品を保管する等のために利用する事業(以下、「倉庫に関連する事業」といいます。)を行う場合、当該事業が倉庫業法上の「倉庫業」にあたるときは、倉庫業法の定める手続に従う必要があります。
以下では、倉庫に関連する事業を行う上で注意すべき、倉庫業法による規制について、解説していきます。
2 「倉庫業」の該当性
(1)倉庫業の意義
「倉庫業」とは、寄託を受けた物品の「倉庫」における保管を行う営業をいい(倉庫業法2条2項)、ここでいう「倉庫」とは、「物品の滅失もしくは損傷を防止するための工作物または物品の滅失もしくは損傷を防止するための工作を施した土地もしくは水面であって、物品の保管の用に供するもの」(同法2条1項)をいいます。
すなわち、「倉庫業」該当性を判断するにあたっては、①問題となるスペースが「倉庫」にあたるか(「倉庫」性)、②当該スペースでの物品の保管に対する対価を得る営業であるか(保管との対価性)が主要な要素となります。
(2)該当しない例
たとえば、第三者に物品を保管するためのスペースを貸したに過ぎず、物品の保管自体は当該第三者に委ねられている場合には、スペースを貸したことに対する対価(賃料)を得ているに過ぎず、②物品の保管に対する対価を得る営業ではありません。
したがって、このような営業は「倉庫業」には該当せず、当該スペースについての賃貸借(事業)にあたると考えられます。
3 「倉庫業」にあたるとき
(1)営業の地理的制限
「倉庫業」については、一定の地域における営業を制限する旨の定めが置かれているため、まずは事業に係る「倉庫」の所在場所について、このような地理的制限が設けられていないかどうかを確認する必要があります。
(2)倉庫業の登録
ア 登録の必要性
「倉庫業」を営むためには、倉庫業法に基づく国土交通大臣の登録を受ける必要あります。
イ 登録要件の概要
倉庫業法は、登録の要件として、当該倉庫が倉庫施設に関する一定の基準を満たしていること、倉庫寄託約款を定めること、倉庫ごとに一定の要件を備えた倉庫管理主任者を選任すること等を規定しています。
なお、登録の申請にあたっては、運輸局が設置する倉庫業相談窓口に相談することができます。
ウ 施設設備基準
倉庫の種類(設備や用途等)による倉庫業法上の区分に応じた施設基準を満たす必要があります。倉庫の種類ごとに施設設備基準の厳格さも異なっており、それぞれの基準については国土交通省のホームページ上で公開されています。
エ 倉庫寄託約款
すべての取引先に共通する約款として、倉庫寄託約款を定め、届け出る必要があります。もっとも、国土交通省のホームページ掲載されている標準倉庫寄託約款と同一の約款を定めたときは、その倉庫寄託約款について、届出をしたものとみなされます。
オ 倉庫管理主任者
倉庫管理主任者は、以下のいずれかである必要があります。
①倉庫の管理の業務に関して2年以上の指導監督的実務経験を有する者
②倉庫の管理の業務に関して3年以上の実務経験を有する者
③国土交通大臣の定める倉庫の管理に関する講習を修了した者
(3)倉庫業者の義務
倉庫業者は、営業所に一定の事項を掲示する義務や、倉庫が施設設備基準に適合するよう維持する義務等を負い、他人への名義貸しは禁止されています。
4 最後に
以上のように、倉庫に関連する事業を行うときは、当該事業が「倉庫業」にあたるかどうかを判断し、「倉庫業」にあたるときは、倉庫業法上の手続を履践しなければなりません。
もし、「倉庫に関連する事業を始めるにあたってどのような手続をすればよいのかわからない」といったことでお困りなら、倉庫業の登録に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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