デマレージ料金はどの事業者が負担するの?

1 はじめに

 海上輸送において、通関手続きに時間を要した場合には、フリータイムに荷物を引き取ることができず、デマレージが発生することがあります。デマレージは大きな金額になることもあり、どの事業者が負担するのかで争いになることがあります。
 この記事では、倉庫業者が取次ぎを行っている場合を念頭に、デマレージの負担がどの事業者に帰属するかについて解説します。

 

2 用語の説明

(1)フリータイムとは

 本船から陸揚げされたコンテナヤードからの搬出が猶予される一定の無料保管期間のことをフリータイムといいます。この期間は、利用する航路や船会社等で異なります。また、リーファーコンテナ、フラットラック、オープントップコンテナ等の特殊コンテナは、一般的に通常のドライコンテナよりフリータイムは短めに設定されています。

(2)デマレージとは

 デマレージとは、超過保管料のことです。陸揚げされたコンテナがフリータイムを過ぎても貨物を引き取りに来ずコンテナヤードに引き続き留置された場合に課されます。一般的には、コンテナヤードからの引き取りを促進する意味から、コンテナを滞在させる期間が長くなるにつれ、一日当たりの料金は累進的に高くなるように設定されます。また、特殊コンテナについてはデマレージも高く設定されています。

 

3 デマレージを負担するのは

 デマレージ料金が発生している場合、それを船会社に支払わない限りコンテナを引き取ることができません。このため、事実上、荷主から荷物の寄託を受けた倉庫業者がデマレージ費用を立替払いするケースがあります。ここで支払ったデマレージを、荷主に対して請求することができるのでしょうか。

(1)原則として荷主負担

 デマレージは、コンテナを輸送する際に船会社との間で締結する貨物運送契約に基づいて発生するものです。ほとんどの場合には、船会社との間で貨物運送契約を締結する主体は荷主なので、デマレージ料金の支払義務は荷主に発生することになります。
 そのため、倉庫業者がデマレージ料金を負担した場合には、荷主に対して、その金額を請求することができます。ただし、倉庫業者が荷主に代わってデマレージ料金を支払うことは第三者弁済に該当します。
 第三者弁済が有効となるには、弁済をするについて正当な利益を有するか、債務者の意思に反しないことが必要です。デマレージ料金を支払わなければコンテナを引き取ることができず、倉庫に保管することもできなくなること等を理由に、弁済するについて正当な利益を有すると主張することも考えられますが、トラブル防止の為には、荷主に立替払いを行うことを通知して、承諾を得た方がよいでしょう。

(2)特約がある場合

 倉庫業者が保管義務に加えて通関手続・荷役業務を含めた港湾運送業務まで一括して受託している場合も想定されます。このような場合に、フリータイム中にコンテナを引き取って倉庫へ運搬して保管することまでが倉庫業者側の義務であるとして、デマレージ料金が発生した場合には、倉庫業者が負担する内容の特約が付されている可能性があります。

(3)損害拡大防止義務

 倉庫業者側の過失によってデマレージの額が増加した場合には、損害拡大防止義務違反として、荷主側からデマレージの一部の支払いを拒否されることにもなり得ます。デマレージの額は、日を置くごとに増加していきますので、デマレージの額を増加させないよう注意を尽くしましょう。

 

4 まとめ

 以上のように、特約がない限りは、荷主がデマレージを負担する必要があります。
 この記事では、倉庫業者が支払った場合を念頭に解説しましたが、支払ったのが港湾運送業者や陸運送会社であっても同様に、荷主に対して請求することができます。

 

5 おわりに

 デマレージは、高額になることもあり、負担の押し付け合いに発展することがあります。それにもかかわらず、デマレージが運送・倉庫業に特有の問題であり、裁判例も少ないため、弁護士であっても詳しいものは少ないのではないかと思います。
 デマレージに関するトラブルが発生した際や、トラブルを防止できるような契約書の作成を考えている事業者様は、運送・倉庫業界に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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発行日:2021.03.04

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